世界ぐるり通信
リトアニアの首都・ビリニュス −−知名度アップで日本人観光客が増加中−−
バルト三国の一つ「リトアニア」は、以前は日本ではあまり馴染みのなかった国ですが、近年は6,000人にのぼるユダヤ人避難民を救った杉原千畝が領事代理として駐在していた国として徐々に知名度が高まってきました。
主として2000年以降に杉原千畝の物語(いわゆる命のビザ発給の話)を題材にミュージカル、TVドラマや映画が上演・上映され始め、リトアニアという国名が少しずつ聞かれるようになってきました。そのため、リトアニアを訪問する日本人観光客も増加傾向にあり、外務省データによると2013年には約10,100人、2014年には約14,500人、2015年には約21,100人と明確な伸びを示しています。
リトアニアは第二次世界大戦後の1990年3月にソ連からの独立回復宣言を行い、翌年10月には日本も新たな外交関係を開設しました。2016年は日本・リトアニアの新たな外交関係開設25周年にあたり、様々なイベントも開催されました。同年の8月に機会があってリトアニアを訪問できましたので、その時に撮った写真をいくつかご紹介致します。
リトアニアの主な産業は食品加工、木材加工、家具製作などですが、国はハイテク産業や高付加価値製品に係る投資を奨励・優遇しており、その結果バイオテクノロジーなどの新技術産業も成長しつつあります。また、金融の安定や持続的な経済発展につながるものと期待されて2015年1月1日に通貨がリタスからユーロに移行されました。
首都のビリニュスは人口約55万人の同国最大の都市で、経済の中心都市でもあります。街の中心部にあり中世の面影を残す旧市街は東欧最大規模と言われており、1994年に世界遺産に登録されました。夜明けの門、聖アンナ教会、大聖堂、ゲディミナス塔など、観光客が訪れる建築物の多くはこの旧市街の中にあります。8月のオンシーズンでも他のヨーロッパの都会に比べると人は少なく、静かに町歩きを楽しめます。
新市街の幹線道路としては、旧市街の北端にあるカテドゥロス広場から北西方面へ走る「ゲディミノ大通り(Gedimino pr.)」ですが、近年の経済発展によって、更に北側の国立美術館近く(Lvovo通り界隈など)にビジネス街が形成され、ハイグレードの高層オフィスビルが立地しています。しかしまだ高層ビル街の範囲は狭く、ビルの数も多くありません。
ビリニュスでは、広い旧市街の保存や景観への配慮のため高層ビルが建設できる場所が限られています。それに加えてここ数年はITや金融関連の需要、多国籍企業や諸外国の政府関係の需要が伸びており、オフィスは不足気味のようです。
とは言ってもKonstitucijos大通りやLvovo通りあたりのハイグレードビルでも月額12〜15ユーロ/u、すなわち現在のレート(1ユーロ=約125円)で月額5,000〜6,200円/坪程度で賃貸オフィスの募集が出ていますから、西ヨーロッパなどに比べるとまだまだ賃料は安いと言えます。
この様に、ビリニュスはリトアニアの中心都市として経済発展が徐々に進んでいますが、景観に配慮したまちづくりも行われており、旧市街を中心に伝統的な街並みが維持されています。物価も他のヨーロッパに比べると安いので、穴場の旅行先かもしれません。なお、有名な杉原千畝記念館(旧・在カウナス大日本帝国領事館)はビリニュスから鉄道で1時間余り離れたカウナスという街にあります。(鈴木雅人)