海外不動産鑑定評価・調査
台湾、公告土地現値と公告地価を発表(2016.1.12)
台湾・内政部は、2016年の“公告土地現値”を発表しました。それによると、台湾全土の地価の平均変動率は年間で+6.70%と上昇が続いています。但し、昨年の+12.0%に比べると上昇幅は縮小しました。
この“公告土地現値”は、平均地権条例46条の規定に基づき、直轄市・県政府が地価評議委員会の評議を経て毎年1月1日に公示する地価で、売買、課税、補償等の参考とされる目的のものです。わが国の国土交通省による地価公示制度に類似しており、各所の地価の水準と動向を把握することができます。
<平均地権条例46条>
主要各市を見ると、台北市の地価は年率で+6.23%、台南市は+7.87%、高雄市+6.91%、台中市+8.02%の上昇となっています。 全国で最も地価が高かったのは台北市信義区にある台湾のランドマーク・台北101の敷地で、1,815,000台湾元/u(約6,440,000円/u、1台湾元≒3.55円で計算)で、昨年に比べて+6.51%の上昇となりました。
次のグラフは、台北市のうち最高価格地の台北101(信義区)と商業地として中庸的と思われる兄弟大飯店(松山区)の公告土地現値の推移を示したものです。
いずれも2002年にわずかな地価下落が見られたものの、2004年からはリーマンショック(2008年)による影響も少なく上昇傾向が今日まで続いています。2004年に比べると、2016年の地価は、台北101敷地で2.45倍、兄弟大飯店も2.12倍となっています。 最も地価の上昇率が大きかったのは2013年通期で、台北101敷地が年間+17.0%、兄弟大飯店が年間+12.3%でした。上昇傾向は続いているものの、それから上昇幅は2年連続で縮小しており、2015年通期は台北101が+6.51%、兄弟大飯店が+9.51%となりました。
他の地点における公告土地現値をいくつか示すと以下の通りになります。
年 度 |
所在地 |
公告土地現値(/u) |
---|---|---|
2016年 |
台北101 |
1,815,000台湾元 |
2016年 |
太平洋SOGO台北忠孝店 |
1,455,236台湾元 |
2016年 |
兄弟大飯店 |
861,362台湾元 |
2016年 |
シャングリラ台北遠東国際大飯店 |
753,953台湾元 |
2016年 |
台安医院 |
606,341台湾元 |
(台北101 / 兄弟大飯店)
また、3年に1回見直される“公告地価”も発表されました。公告地価は「申報地価(※)」の参考のため、地方政府が公告土地現値等を参考に評定するものです。 2016年の公告地価は、台湾全土で3年間の上昇率が+30.54%となり、過去最高となりました。台湾の土地取引市場の活況が反映された結果となっています。
※ 申報地価とは、土地所有者が登記の際に自己申告する地価のことで、孫文の三民主義の考え方を基礎とする平均地権−−所有より利用の意義を説いたもので、土地を活用することが必要な人に、土地を取得して利用する機会を与えることを理念とする考え方−−を具現化する政策の一つです。 すなわち、地価を安く申告すれば課される税金は低いですが、その安い価格で買収されるおそれもあるため、この相互効果により適正な地価を申告させようとするのが狙いとなっている制度です。 詳しくは「土地制度の発展過程に関する一考察」を参照して下さい。
この公告土地現値と公告地価は、実際の土地売買事例等のデータに基づき評定されるもので、公告土地現値は実勢取引価格の約90%、公告地価は実勢取引価格の約20%の水準となっています。2016年は、台湾全土平均の公告土地現値は実勢取引価格の90.53%、公告地価は実勢取引価格の20.50%の水準と発表されています。
例えば、上記の台北101敷地の公告地価は、2016年は508,000台湾元/uで、公告土地現値1,815,000台湾元/uの0.28の水準となっています。
(台湾・内政部公開の地図)