世界ぐるり通信
復興が進む中国雲南省・シャングリラ−−大火災から1年半が経過した独克宗古城の現状(2015.7.20)
2015年7月、中国雲南省にあるシャングリラ(香格里拉)という街にプライベートで旅行に行ってきました。
シャングリラは、雲南省・デチェンチベット族自治州の中心都市で、標高が約3,300m、チベット族が多く住むチベット文化圏の街です。 人口の約3分の1がチベット族で、州内では11〜14万人が暮らしていると言われています(正確なデータがありません)。
さて、このシャングリラには、1300年の歴史を持つチベット族の古い街である「独克宗古城」と言う旧市街がありますが、2014年1月11日未明に大火災に見舞われました。 古城内の旅館から電気器具の不具合により出火し、瞬く間に延焼、大火災に発展しました。
延焼が著しかった理由としては、多くの建物が木造建築であったこと、道路が狭く延焼が早かったことが挙げられ、また、道が狭いため消防車が火災現場に入れなかった、防火用の貯水槽が1箇所しかなくて水がすぐになくなったなど、消火作業も進まなかった点が指摘されています。
消防車が入れず延焼が止まらなかったことから、やむを得ず消防車が通れるようにまだ燃えていない家屋を取り壊し、緩衝帯を確保して古城の全滅をしのいだとのことで、結局、焼失家屋は246棟、緩衝帯のための取り壊し家屋が97棟の合計343棟が失われました。 地元メディアは「有史以来、最も深刻な火災」と報じるなど、その損失の大きさを嘆いたそうです。
(独克宗古城のうち焼失を免れた地域の状況)
家屋が焼失したのは古城の南西部から北西部の一帯で、相当な広い範囲で更地化してしまいました。 この火災によって訪れる旅行客も減り、特に中国の観光ブームによってシャングリラ市への来訪者は毎年増加していた矢先ですから、地元に大きな打撃となりました。
州政府は、この独克宗古城を重要な観光資源と位置づけており、12億元(約240億円、2015年7月のレート計算)の予算を組み、再築に取り組んでいます。 3年以内に完成させる計画となっており、急ピッチで再建築工事が進められています。
今回、被害が酷かった南西部や北西部を歩いてみました。 火災から1年半が経過しましたが、確かに急ピッチで復興が進んでおり、広く更地だった場所にも工事中の建物が連立して街区がはっきりしつつあります。
再築建物は木造で、色彩や素材、様式などで既存建物(中には築100年を超えるものもある)との調和が図られています。 耐火構造とはなっていない様ですが、日本の京都にも古い街並みが保存されているにも係わらず火災が起きないこと、その理由として地元京都の住民の防火・防災意識が高いこと等の例が参考としてあげられ、地元住民の防火意識の向上が目標とされているとのことです。
中には既に竣工したものも散見されますが、殆どの家屋は工事中で、店舗の再開はまだ先になりそうです。 竣工済み、または竣工間近の物件には、連絡先の電話番号が記された簡単な貼り紙で賃貸募集案内が出始めていますが、まだ周辺地域が工事中ばかりで入店できる状況ではなく、店舗賃料も相場がまだ形成されていないようです。
(再建築が進む被災地域 / “出租”の賃貸募集広告も出つつある)
古城内で、被害を免れた北部や南東部では既存の飲食店や小売店舗が営業を続けており、充分に観光ができるレベルは維持されていますが、2年くらい後にはより一層賑やかになるでしょう。 特に古城内では宿が不足しており、既存の宿は質の割には料金が高い気がしますので、今後は供給が進むのではないでしょうか。
シャングリラは、見るべき所は独克宗古城だけではなく、郊外にはチベット仏教寺院(松賛林寺)、湿原、森林公園や大峡谷といった豊富な観光資源が点在しており、州政府も観光業に力を入れている様です。今後の古城の本格的な復興が期待されます。(鈴木雅人)
(松賛林寺/湿原でのヤクの放牧/チベット族の村・巴拉村/険しい山々と天然仏塔)