世界ぐるり通信
消えゆく海外のラジオ放送局2 −−海外放送受信のインターネットと似た楽しさ−−
皆さんは1970年代のBCLブームをご存じでしょうか。前回のコラムで、インターネットの普及によって海外の短波放送が相次いで終了している点について触れましたが、この短波放送を中心とするラジオ放送を受信して楽しむ趣味がBCL(Broadcasting Listening/Listener)で、これが1970年代中頃から1980年代初めにかけて中学・高校生の間で大ブームとなりました。
ブームが起こって、多くのBCL専門の雑誌や関連本が発行され、電機メーカーはブームの中心である若年層のニーズに合わせた比較的安価な受信機(BCLラジオ)を発売し、テレビCMも流れました。
当時は多くの海外局が日本向けに日本語放送を実施していましたが、それらの番組を聴取するほか、遠方からの局や小出力の局など、受信困難な放送局の受信に挑戦する楽しみ方がありました。また、アマチュア無線と同じように受信した放送局に対して受信報告書を郵便で送れば、受信確認証(QSL、ベリカード)が発行されることがあり、その収集を楽しむ人もいました。
これらBCLブームの概要は、NHKワールド JAPANのホームページ内「国際放送の80年・年代史」にも掲載されています(2018年5月現在)。
筆者もブームに乗ったうちの一人ですが、このBCLの趣味によって未知の国々について知識を得ることができました。初めて知った国名も多く、たくさんの都市名も覚えました。また、特に公用語や文化圏、音楽の特徴などをかなり詳細に学ぶことができました。
現在のインターネットの楽しさと共通点もあったと個人的には思います。放送は一定の周波数帯に集中して出ていましたから、夕方や早朝に周波数帯の端から端までサーベイして珍局を探すなど、インターネットサーフィンの様に未知のものを探す楽しさがありました。
また、いろいろな国の放送局に向けて受信報告を送り、受信確認証を郵送してもらうことは「世界の人とのつながり」、「自分の発信」であって、これもインターネットの楽しさと共通していた気がします。手書きの紙による発信で、日本語放送以外は辞書をひきながら外国語による作文が必要であり、返信をもらうまでに数ヶ月かかるなど、超ローテクで時間のかかるつながりでしたが、それゆえに価値があったのかもしれません。
筆者が取得できた受信確認証QSLを少々ご紹介します(比較的新しいものも込み)。
他に放送局からはステッカーやペナントなども送ってもらったことがあります。
前稿でご紹介した通り、今は多くの局が放送をやめてしまいました。時代の移り変わりを感じます。(鈴木雅人・2018年5月)