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海外不動産鑑定評価・調査

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海外不動産鑑定評価・調査

現地調査レポート−−マカオの不動産市場(2015.4.1)


 1999年12月に行政管理権がポルトガルから中国に返還されたマカオ(マカオ特別行政区)は、2002年には地元財閥のスタンレー・ホー氏が独占してきたカジノ経営権を開放し、一気に投資が進みました。 現在、マカオのカジノの総売上げは、年間400億ドルを超え、ここ5年間で約3.5倍、アメリカ・ラスベガスと比べて約7倍の規模となっています。

 海外からの投資が進み、急速な経済発展が続いたマカオ。そして中国本土が景気後退期に入った現在、マカオの不動産市場はどの様な状況になっているのでしょうか、調査を実施しましたのでご報告致します。


 マカオ特別行政区政府の発表によると、マカオの2013年までの10年間のGDPは、以下の通りリーマンショック直後を除けば非常に高い成長率を記録しました。 2004年に米国系カジノである「サンズ」がオープンしたのを皮切りに、ウィン・マカオ、ベネチアン、MGMグランドなど次々に大型カジノリゾートが開業し、観光客も急増、著しい経済発展が進みました。 ところが2014年はマイナス成長(−0.4%)となっています。


  (マカオのGDP成長率の推移 / 2007年開業・MGMマカオホテル&カジノ)



 不動産も、返還後から2013年までは市場の急成長が見られました。マカオは外国人による不動産所有の規制がなく、外資による不動産投資も活発に行われていることから需要は旺盛で、不動産価格は上昇傾向で推移してきました。 統計局(Statistics and Census Service)の発表によると、マカオの住宅取引価格の推移は以下の通りで、2014年第4四半期の住宅価格は、既存住宅で平均82,073MOP(パタカ)/u、先行販売(新築)住宅で平均146,608MOP/uでした。

 ただし、長らく上昇を続けていた既存住宅の価格は、2014年第4四半期に下落に転じています。



 この現在の住宅価格の水準を、香港、並びに隣接する中国・珠海市横琴新区(後述)の住宅価格と比較してみます。


所 在

物 件

価格水準(/u)

マカオ

既存住宅・平均(2014・Q4)

82,073 MOP

マカオ

先行販売住宅・平均(同上)

146,608 MOP

マカオ(半 島)

The Paragon

97,000〜110,000 MOP

マカオ(半 島)

湖畔名門

97,000〜120,000 MOP

マカオ(タイパ)

Nova Park

100,000〜135,000 MOP

マカオ(タイパ)

名門世家

80,000〜120,000 MOP

所 在

物 件

価格水準(/u)

香港(香港島)

民間住宅・平均(2015・01)

143,000〜201,000 MOP
(139,000〜195,000HK$)

香港(九 龍)

民間住宅・平均(2015・01)

119,000〜183,000 MOP
(116,000〜178,000HK$)

香港(新 界)

民間住宅・平均(2015・01)

94,000〜107,000 MOP
(91,000〜104,000HK$)

横琴新区

華融琴海湾

38,400〜55,000 MOP
(30,000〜43,000元)

横琴新区

K2

47,400〜51,200 MOP
(37,000〜40,000元)


 マカオの築浅・高層住宅物件の販売価格も参考のため掲載しました。 香港のデータは香港特別行政区政府発表の不動産市場統計より抜粋、また横琴新区は個別物件の販売価格を掲載しました。 価格は比較が容易なようにMOPに換算して表示しています(1HK$=1.03MOP、1元=1.28MOPで計算)。なお、1MOP=約15円、です。

 これによると、マカオの住宅価格は2013年までの数年間で相当な値上がりを見せましたが、現時点では香港の新界地区の水準は超えてはいるものの香港島や九龍地区よりはまだ低い水準にある様です。 また、横琴新区の住宅は、現時点ではマカオの半分以下の水準の様です。



  (マカオの比較的新しい高層住宅 The Paragon / 湖畔名門)



 現在、中国本土の景気後退が顕著になる中で、マカオの経済及び不動産市場も低迷期に入っており、上述の通りGDP成長率も2014年はマイナスとなりました。 その最大の理由は、経済面で依存度の高いカジノ売上げが2014年から減速していることであり、悲観的な意見が増えています。

 マカオ財政局の発表によると、2015年通期の総カジノ税収の予算は1,180億MOPで、2013年実績1,267.4億MOP、2014年実績1,288.7億MOPに比べると7〜8%程度少なく計上されています。 一方、実績値を見ても、2015年1月および2月の歳入合計は201.6億MOPで、そのうちカジノ税収は全体の約84%を占める169.5億MOPですが、2014年同期の223.1億MOPに比べると24.0%の減少となっています(2013年同期は198.0億MOP)。

 不動産も、統計局発表によるデータをまとめると、総取引件数は以下のグラフの通りであり、ここ3年間で見ると2012年第2四半期をピークとして減少している状況が読み取れます。 また、前掲グラフの通り、長らく上昇を続けていた既存住宅の価格も2014年第4四半期には下落に転じています。地元不動産仲介業者の話でも、取引件数は相当に減っており、ここ1年間で住宅価格は10%程度下落したとのことでした。



 この様に、マカオの不動産市場は後退期に入りました。しかしながら、マカオは面積が狭い中、世界遺産も豊富であり、カジノを主軸とした観光開発が今後も計画されていることから、関連産業や不動産に対する投資の期待感は依然として感じられます。

 例えば、2015〜2016年にかけて、カジノIR統合型リゾート施設の「パリジャン・マカオ」など、コタイ地区を中心にホテル、商業施設がオープン予定です。 また、都市交通のマカオLRT(澳門軽軌鉄路)、並びに香港のランタオ島とマカオ及び広東省珠海市を結ぶ海上橋「港珠澳大橋」(全長35km)も2016年の供用開始に向けて工事進行中です。


 更に、マカオの西側に位置する中国・珠海市の横琴島が、2009年に珠海経済特区に組み入れられ、上海浦東新区、天津濱海新区に次いで3番目の「新区」に指定され(横琴新区)、税の優遇、マカオとの車輌往来の自由化など、より高度な特区として位置づけられています。 まだまだ住宅などの都市開発は途上段階であり、人が少なく閑散とした街区が多い状況ですが、既に誘致したマカオ大学が開校し、世界最大級の水族館を擁する「長隆海洋王国」がオープンするなど、マカオと相互補完のうえ発展が期待されています。


 今後、マカオ経済と不動産市場はどの様に推移していくのか、注目されます。



  (横琴新区の住宅工事現場 / マカオ大学と整備が進む手前の街区)


 
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