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海外不動産鑑定評価・調査

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現地調査レポート−−シンガポールのオフィス市場(2013.8.28)


 シンガポールは、外国企業の誘致と貿易振興政策を強く進めてきたことで発展を続けてきた経緯があり、そのためビジネス環境が整備されていることで知られています。 シンガポール国内には日系企業も含め、非常に多くの海外の企業がオフィスを構えています。

 さらに、近年は観光を経済成長の手段と位置づけ、セントーサ島とマリーナ地区での開発が進められてきました。 その様な経済政策に成功しているシンガポールのオフィス市場について調査を実施しましたのでご報告致します。


 観光産業の振興において軸となっているのは2つのIR(統合型リゾート)です。セントーサ島では、2010年1月にリゾート・ワールド・セントーサがオープン、 同2月にシンガポール初となるカジノが施設内にて開業しています。同じく3月にはユニバーサル・スタジオ・シンガポールも開業しました。

 一方、業務中心域のマリーナ地区では、巨大カジノリゾート施設「マリーナベイ・サンズ」が同4月に開業しました(最高高さ200m、57階建、ホテルは客室数2,560)。 その結果、2012年には10年前の約2.5倍に相当する1400万人がシンガポールを訪れました。



  (セントーサリゾート内のカジノ / マリーナベイ・サンズ)



 ビジネスと観光の相互作用もあって、シンガポールのオフィス需要は旺盛で、売買、賃貸市場ともに活況を呈しています。 下図は都市再開発庁(URA、Urban Redevelopment Authority)が発表している不動産価格指数(オフィス)の推移をグラフ化したもので、 リーマンショックで落ち込んだ価格も、2009年第3四半期を底に回復を続けています。ここ2年間は回復の程度はやや鈍化していますが、 それでもオフィス床の価格指数は2013年第2四半期には過去最高値の130.8を記録しました(1998年第4四半期=100)。


 また、オフィス賃料も価格ほどではないものの、ここ1年間で約2%の上昇、ここ2年間では約3.5〜5%の上昇を示しています。オフィス空室率も、 2013年第2四半期で8.8%(シンガポール全域)となっており、1年前の10.9%より改善しています。

 最近のオフィス床の取引価格水準の例(マリーナセンター、パシフィックプレイス周辺の業務中心地区)を示すと以下の通りとなります。 賃料は同地区で月額S$7.5〜12/sq.ft程度で推移しています。

ビル名

売買価格水準

地 区

Suntec City Tower 2

S$3,400/sq.ft

Marina Centre

Robinson Square

S$2,900/sq.ft

China Town

Oxley Towers

S$3,600/sq.ft

Robinson Rd.

The Octagon

S$2,800/sq.ft

Shenton Way

Prudential Towers

S$2,700/sq.ft

Cecil St.


 周辺の東南アジア諸国の発展も著しいため、アジア圏におけるビジネス拠点としてシンガポールに進出を希望する外国企業は依然として多く、 今後も安定したオフィス需要が不動産市場を支えるものと予測されます。一方で、人口過密で住宅賃料が高騰し、駐在員の生活費を圧迫しているほか、 外国企業の誘致が進むにつれて、外国人がシンガポール国民の雇用機会を奪っているとの批判も出始め、2012年頃から外国人の就労パス取得条件が厳しくなりつつあるなど、 過熱気味な市場を抑える要因も散見され、今後の動向が気になるところです。


  (シンガポール都心部に林立するオフィスビル)


 
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