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国内不動産鑑定評価・調査

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国内不動産鑑定評価・調査

私道の利用可能性 −私道の道路以外の利用検討・・・・価値評価の参考として−


 「私道」は、法律用語ではなく、確たる定義もありませんが、法的な性格に係わらず道路状であり且つ民有地である場合には「私道」と呼ばれることが多いと言えましょう。

 例えば、

 ・道路法上の道路(国道、県道、市道、区道など)と建築基準法第42条の道路のいずれ

  にも該当しないが、通行の用に供されている道路状の民有地

 ・道路法上の道路に該当しないが、建築基準法の第42条1項5号(位置指定道路)などの

  法的性格を有する道路状の民有地

 ・道路法上の道路である(幅員4m以上あれば建築基準法第42条1項1号の道路でもある)

  が、所有権が民間人である場合の道路敷部分

などがあげられます。この様な場合に、対象部分を「私道」と呼ぶことが多いです。


 この様な私道の価値の判定については、多くの書籍や論文が発行されていますが、一般に対象私道の系統・幅員・構造や法的性格、人や自動車の通行状況、埋設管の状態、課税の有無、宅地への復帰可能性等を総合的に勘案して判定する旨の解説が多くなっています。また、減価率の参考としては、旧国土庁監修の土地価格比準表における私道減価や、財産評価基本通達や過去の収用委員会裁決事例などがあります。


財産評価基本通達

 二四 私道の用に供されている宅地の価額は、一一((評価の方式))から二一―二((倍率方式

   による評価))までの定めにより計算した価額の一〇〇分の三〇に相当する価額によって

   評価する。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されていると

   きは、その私道の価額は評価しない。


 さて、これら私道については、法的な制限の範囲内でどの程度私道を「私道以外の用途 ・・・植木鉢設置、物置設置、駐輪場、駐車場など」で使えるのかについても価値判定の参考となるでしょう。 今回はこの私道の私道以外の用途としての利用可能性について考えてみましょう。



<道路法上の道路(国道、県道、市道、区道など)の場合>


 自分の土地が市道などに認定されている場合、道路以外の使用は可能でしょうか・・・答えは「不可能」です。道路法によれば、第4条(私権の制限)で、「道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することができない。 但し、所有権を移転し、又は抵当権を設定し、若しくは移転することを妨げない」と規定されていますので、物を置く、駐輪場として使うなど独占的に土地を利用する私権の行使はできません。 (なお、占用許可を取ることで道路以外の一定の使用は可能ですが、これはその土地が自分の所有地かどうかは関係がありません)

 すなわち道路法による道路は、管理も国、県、市等が行う公的性格が非常に強いものであり、そのため市道などに認定された民有敷地部分については市等が有償で買い取ることも少なく、寄付を求めるケースが多くなっています。


<道路法上の道路に該当しないが、建築基準法の第42条1項5号(位置指定道路)などの法的性格を有する道路状の民有地>


 代表的な例としては、住宅ミニ開発の際に設置される位置指定道路があげられます。建築基準法では道路扱いですが、道路法上での道路認定はなく、管理も所有者による道路の場合は私的な使用は可能でしょうか。

 建築基準法によれば、第44条(道路内の建築制限)で、「建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない」と規定されており、定着物の設置はできません。 しかし、自転車、物置、植木鉢などの動産については設置を禁止する条文はありませんので、同法上は可能と解釈できます。


 但し、位置指定道路については平成9年12月18日に最高裁で以下の判決が出ていますので私的な使用も限度があると考えるべきでしょう(平成8(オ)1361、通行妨害排除)


最高裁平成8年(オ)第1361号、通行妨害排除

 

「建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する」


 また、適用されるかどうかは警察当局の判断にもよりますが、道路交通法第76条においても、「何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない」と規定されており、やはり交通妨害等となる動産の設置には注意が必要となります。


 自動車の駐車場に関しては、自動車の保管場所の確保等に関する法律第11条において「何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない」等の規定もあり、私道の駐車場利用にも注意しなければなりません。 これについても対象私道がこの法律の適用となるかどうかは警察当局の判断による様です。


 一方、建築基準法第44条では建築制限について「地盤面下に設ける建築物」をこの限りではないとしています。すなわち地下利用(建築物の構築等)は可能です。これは位置指定道路だけでなく、大阪船場地区において指定されている船場建築線の様な「附則5項道路」や建築基準法第42条2項道路のセットバック部分も該当し、地下建築物・工作物の築造は可能とされています。 但し、位置指定道路等の構造上の仕様に関する規定が行政サイドで細かく決められており、その仕様を阻害する様な内容の地下利用はできないことになっています。(2015年6月)




 
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