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世界ぐるり通信

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物々交換? あの頃のお金の話−−25年ぶりのヤンゴン訪問(2013.2.20)


 2013年2月、ミャンマーのヤンゴン(旧ラングーン)を訪れました。今回は2回目の訪問で、前回は1988年1月ですから25年ぶりです。


 ミャンマーといえば、長らく軍事政権下で鎖国に近い様な状態でしたが、2010年11月に新憲法のもとで総選挙が実施され、アウンサン・スーチー氏の自宅軟禁も解除されるなど、民主化と経済改革が急速に進んでいる話題沸騰の国です。

 25年前に比べると、街並みは新しい高層ビル、ホテルや外国人にウケそうなレストランがピンポイント的に少し建てられた程度で、古い建物が建ち並ぶあたりはあまり変わっていない印象を受けました。


  (25年前のヤンゴン市内の様子。古い街並みは今もあまり変わっていない)


 さて、前回訪問の1988年といえば、ビルマ共産党崩壊、国名変更、大規模な民主化運動の勃発など、何かと混乱していた時でした(当時はまだ日本でもビルマと呼ばれていました)。 実際、「な、なんじゃこりゃ?」と驚くことばかりでしたが、お金に関することを少しご紹介致します。


 お金に関して驚いた点は、(1)紙幣が45チャット、90チャットなどと非常に珍しい単位、(2)噂には聞いていましたが、公定レートと実勢レートに5〜6倍の差がある、(3)国民がとにかく外国産の製品、商品に飢えており、物品を売ってくれとの誘いが激しかった、の3点です。


 さて、見たことのない45チャットや90チャット紙幣ですが、なぜこんな中途半端な単位の紙幣が発行されたかは理由があります。

 ミャンマーは、過去3回、廃貨を行っています。1回目は古い時代ですが、2回目が1985年11月で、20、50、100チャット紙幣を廃貨しました。 その代わりに25、35、75チャット紙幣を発行しました。廃貨の理由は、政府がインフレ抑制のため貨幣流通量を減らそうと考えたこと。 代わりに発行した紙幣が中途半端な25、35、75チャット紙幣であった理由も「使いにくくして通貨流通量を減らそう」というもの。

 更にミャンマー政府は、2年後の1987年9月にこの25、35、75チャット紙幣を廃貨しました。代わりに45、90チャット紙幣を発行。 これら廃貨の紙幣に対しては十分な補償はされず、多くの人がお金を失って不満をかい、私が訪れた数ヵ月後の1988年8月の大規模な民主化要求運動を起こす引き金となったそうです。 (このような廃貨や、インフレ対策として、多くのミャンマー国民は現在も外貨や金製品を資産として保有しています)


 経済が弱いというのもありますが、こんなことをやっているために通貨の信用は下がります。 ミャンマーの通貨「チャット」が信用されない、つまり不安定な通貨であるため公定レートと実勢レートが乖離していました。

 当時(1988年1月)のレートは、

   US$1=6MMK (1MMK=約21円)公定レート

   US$1=33.5MMK (1MMK=約3.9円)実勢レート

その差は5〜6倍です。ちなみに当時はUS$1=130円


 しかし、その後も更にチャットの信用が下がったにも係わらず、公定レートは維持されたので、益々公定レートと実勢レートの差は広がりました。 2010年頃は公定レート(US$1=6MMK)と実勢レート(US$1=1200MMK)の差が200倍を超えていたと聞きます。

 ちなみに今回訪問の2013年2月には、通貨は管理変動相場制が導入されており、US$1=860MMKでした(1MMK=約0.1円)


  (25年前の朝のヤンゴン市内風景と人懐っこい子供達)


 ミャンマーは1988年以前も鎖国的な経済政策を取ってきたので、とにかく国内は品物不足でした。街中では、露天商が中古のおもちゃ、中古ボールペン、中古100円ライター等どうでもいい様な「ガラクタ」を売っていました。 驚いたことにタイ航空の機内で座席前のポケットに備えられてある機内誌「SAWASDEE(サワディ)」や安全のしおりまで売っていました(誰が買うんだ?)。


 市場でミャンマー人のおじさんにいろいろ聞けましたが、米ドルや円などの外国通貨も欲しいが、それよりも外国産の商品が欲しいとのことでした・・・・酒、タバコ、電卓、フィルム、手帳、新年のカレンダー、そしてMitsubishiやToshiba、Fujitsu等のステッカー(何に使うんだよっ!)などが特に欲しい物とのことでした。

 従って、私も1988年のミャンマー滞在中は、いろいろと品物を売ってチャット紙幣を入手しました。例えば、以下の通りです。

  ・バンコクの空港免税店で買ったお酒(約2,000円)が570MMK

  ・幼児向けおもちゃ(竹とんぼ)が10MMK

  ・日本製タバコ1箱(220円)が40MMK

  ・FUJIフィルム1個が45MMK

両替じゃなくてまるで物々交換ですね。


 そんなミャンマー(ビルマ)も、今は経済改革で世界中から注目される時代が来ました。今回の訪問ではお金に関しては25年前の様なとんでもない驚きはありません。但し、ホテル代は高くて驚きました。


 最後に1988年と今回2013年の物価を比べてみます。

内 容

1988年価格

2013年価格

ビール

40MMK
(約155円)

1,000〜1,500MMK
(約100〜150円)

ミネラルウォーター

10MMK
(約40円)

250MMK
(約25円)

昼食・夕食

40〜80MMK
(約155〜310円)

4,000〜5,000MMK
(約400〜500円)


 インフレが激しく、インフレ率は3000%くらいになっています。今回の食事代が高いのは、サクラタワーなど高級なレストランに入ったからでしょう。 25年前にはありませんでした(ストランドホテルのレストランでも85MMKくらいでロブスターが食べられました)。(鈴木雅人)


  (2013年、変わらないスーレーパゴダと背後の新しい高層ビル / 乗り合いバス)


 
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